Engineer's Journal

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【感想】アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝

米Appleと言えばスティーブ・ジョブズが神のごとく崇拝されていますが、エンジニアとしてはもうひとりの神でありApple共同創設者である彼にも注目したいところ。というわけで自伝を読んでみました。

子供のころから天才的な頭脳とエンジニアリングに没頭できる集中力を持ち、世界で初めて「ディスプレイ、筐体、キーボード」の3点揃った(つまり、現在のPCのスタイルの原型となる)個人向けコンピュータ、Apple I, Apple IIをほぼ独力でつくりあげた伝説的なエンジニア。ジョブズがエンジニア出身とはいえ交渉事やコマーシャル、マーケティングなど万能なジェネラリストなのに対して、彼はいいアイデアを形にすることに没頭し、全力を注ぐ根っからのスペシャリスト。富や地位なんかにはさほど興味がなく、内気で、いたずら好き。漫画に出てきそうな「いわゆる技術オタク」なタイプの人みたいです。

どうしたらもっと部品点数を減らせるか?どうしたらより高性能にできるか?まだ回路シミュレーションなんて全然できなかったころ、ウォズは家で紙の上で、考え続けたそうです。昔の人はよく紙の上で考えろ、と言いますが、僕も含めて現代の技術者はCADに甘えがちなところってありますよね。でもこの姿勢こそ大事!と気持ちを新たにできました。

この本は編集者からインタビューを受けて、ウォズが昔を振り返りながら自分の人生を語り、編集者がそれを文字にする、という形式で書かれた本のようで、そういう形式のため時間軸がとびとびになってしまうこともあり、少し頭で整理しながら読んでいかないとうまくつながらない部分もあります。しかし基本すべて口語調で、文章の端々から彼の人となりがうかがえるため、読んでいてすごく惹きこまれてしまいます。同じエンジニアとしてすごくワクワクさせられましたね。

非常に印象的だったのは、彼のエンジニアとしてのベースは、幼少のころの父親とのコミュニケーションだったことです。彼の父もまたエンジニアで、親子でよく一緒にものを作り、様々なことを父親から教わったようですが、ウォズの問いかけ1つひとつに対し、父親はウォズがしっかりと理解できるよう真摯に根気強く答え、ウォズもまたその知識・技術をしっかりと自分のものにしていったという、理想的な教育を受けていました。これには驚きましたね。父親すごい。

いちエンジニアとして、また後輩にものを教える立場の人間として、モチベーションがぐっと上がる、とても勉強になる本でした。これ、エンジニアなら絶対読むべき。ほんとおすすめです。