Engineer's Journal

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【感想】決断力

現代最強の棋士であり、また趣味でやっているチェスでも日本最強の男、羽生善治氏の著作。「自分の持つ知識・経験をフル活用し、限られた時間内に最善の一手を打つ」という能力は、職種・業種に関係なく求められると思いますが、そこに必要なのが、次の一手を打つ際にそれが最善であると信じて決断する事です。最善かどうかって、後からじゃないと分からないですから。で、決断する事そのものを対象に書かれた自己啓発本という事で、この本をチョイスして読んでみました。

目次

第1章 勝機は誰にもある
第2章 直感の七割は正しい
第3章 勝負に生かす「集中力」
第4章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
第5章 才能とは、継続できる情熱である

勝負師もエンジニアも、プロとして大事なことは同じ

読んでみて思ったのは、勝負師の世界でもエンジニアの世界でも、プロとして生きていくために大事な事って本質は同じなんだなー、という事。もともと僕は「どんな物事でもスキルアップのプロセスは同じだ」というのが持論なんですが、読んでみて、改めてそう思いました。特にそう思ったのが、第1章の以下の文。

つまり、何かを「覚える」、それ自体が勉強になるのではなく、それを理解しマスターし、自家薬籠中のものにする――その過程が最も大事なのである。それは他人の将棋を見ているだけでは、わからないし、自分のものにはできない。自分が実際にやってみると、「ああ、こういうことだったのか」と理解できる。理解できたというのは非常に大きな手応えになる。

エンジニアの世界でも、手計算→シミュレーション→実測と、ひととおりの流れを体験して初めて「生きた知識」を得られると言われていますし、実際にそう思っています。現象の本質的理解や勘を養うという事は手計算無しには成り立ちませんし、手計算で得た結果をシミュレーションによって理想的な環境下で再現し、また実測によって現実の、非理想的な環境下で再現する事で、新しい気づきを生み、理解に深みや幅を持たせる事ができるからです。

他にも、例えば情報の取捨選択についてや、「データや前例に頼ると自分の力で必死に閃こうとしなくなる」など、情報社会のメリット・デメリットについて現代社会が抱える問題と同じような問題を抱えていて、まさに社会の縮図です。

勝負の世界の心理描写も勉強になる

それから勝負の世界の方なので、当然ながら対戦相手との駆け引きや対局中の心理描写についても分かりやすく書かれていて、これも勉強になりました。一見エンジニアには関係の無さそうな話ですが、ユーザーや他部門のエンジニアとの折衝、上級管理職や役員へのプレゼンテーション、営業の方のフォローなどなど、エンジニアとしてのキャリアアップのためには人間同士のあれやこれやは避けては通れない道なので。

文章構成も読みやすく、総じて良い書籍だと思いました。