そろそろ若手と中堅の間くらいの年齢になってきたので、いつ後輩指導を任されてもいいように、と心の準備をするために読んでみました。内容は新人への入社時研修がメインの題材になっていますが、日頃の後輩指導に使える情報も多く含まれており、勉強になりました。
目次
第1章 教育の計画を立て、受け入れの準備をする
第2章 入社時教育がその後の成長の基礎になる
第3章 新入社員に悩みがあると教育効果は半減する
第4章 経験を通じて多くのことを身につけさせる
研修事務局向けだが、講師役にも役に立ちそうな内容
本書では、第1章から順に、計画の立て方、運営のポイント、フォローの仕方、実習の事例について、わかりやすくまとまっています。計画策定からなので、どちらかと言うと講師役ではなく事務局向けの題材になっています。
特徴的なのは、説明の中で出てくる例が、図表をふんだんに使って直感的にわかりやすいものになっている点です。例えば、「どのような計画とするか?」という例では、目的、内容、講師名に加えて期間や予算についても明記されており、非常に参考になります。
「目的」と「一貫性」が重要
また、とても印象に残っているのが、「目的」と「一貫性」という言葉が何度も繰り返し使われていた事です。特に目的の大切さについては、本文中で著者の経験が語られており、また「研修の効果を上げるためには、目的を明確にし、わかりやすい言葉で新入社員に理解させる事が最も大事だ」とも述べています。確かに、僕も仕事上「目的」は非常に重要視していますが、エンジニアリング以外の世界でも目的意識を持つことが重要であることに変わりない、という事を再確認できました。
一貫性についても、主に新人のモチベーションの観点から、全体研修でも実際の職場でも、会社としての意思に相違が無い事が重要と述べています。これは別に社会人に限らず誰でも、「あっちではこうしろと言われたのにこっちではそんなことやるなと言われる」といった経験があるかと思いますが、これって確かにモチベーションを下げる大きな要因なんですよね。会社によっては事務局と講師と現場とで事前にすり合わせが必要かもしれません。また、普段の業務においても、「自分はこう」とマイペースにやるのもいいですが、後輩指導という観点では、モチベーション維持に注意を払う必要がありそうです。
体験型研修の重要性
もう1つ印象に残っているのが、実習と言いますか、実際に経験させる体験型研修についてです。本書の例では店舗での販売研修でしたが、やはりエンドユーザーの生の声を聞ける事や色々試行錯誤しながら課題に対応していく事は、実践的でとても身になるようです。現に僕も、半導体の開発部門に配属される前は3ヶ月ほど半導体の工場で実習をやっており、製造現場に立たなければ分からない事をたくさん勉強させていただきましたし、実際にその時得たものが今でも役に立っています。実習先としっかり連携が取れるかどうかが重要になってきますが、そこさえクリアしてしまえば、非常に良い研修になるのではないでしょうか。
…といった具合に、主に事務局向けではありますが、その他の方が読んでも非常に面白い内容でした。